蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

本屋大賞直木賞のW受賞作品。

表現がとてもストレートで、正直真ん中あたりは心臓がばくばくして落ち着かなかった。

夜に読んでしまったのがいけなかった。ずっと心臓がばくばくして、本を閉じても眠れなくて、気持ちを落ち着けるのにたくさん時間を使った。

夢物語みたいだった。音楽という難しそうな分野。ピアノの色鮮やかさを表現しているように見えて、言葉の色鮮やかさに気付かされる。

この本を書いている人がすごく音楽について勉強しているのもわかった。正直、クラシックってあまり馴染みがなくて、たまにしか聴かないんだけど、生のクラシックを楽しむ、というよりも、この書いている人が聴いて感じたクラシックを、文字を通して共有できることがとても嬉しかった。
うまく言葉にできないけど、この曲はこの人にとってこういう曲で、そういうイメージが浮かんで、そう聴こえたんだなっていうの経験を、言葉だけで受け取る体験ができたのがすごく楽しかった。

だから、久しぶりに本を頭じゃなくて感情で読んだ気がする。

久しぶりに自分の感情の引き出しを開けて、太鼓を鳴らして踊らされたから、読んだ後は疲れて寝てしまった。

起きたらスッキリして、いい夢を見たなって感じ。
夢を見るとだいたいよく眠れたなぁって気持ちにはならないけど、読了後の寝起きはよく眠ったなぁって感じ。やっと私の現実に帰ってきたんだ、って気持ちが湧いてきて、ほっとした。

本の最後、色んな人のレビューを見ると賛否両論あるようで、なるほどなぁって気持ちで読んでたけど、言うほどそんなに気にならなかったなぁ。

書いている人がここで終わらせた方がいい、とか、ここでもう終わりにしようって思ったところで終わりになるのが一番いいと思う。
コンクールが終わった時点で、私は正直お腹いっぱいだったから、あまりその後については多くは語らなくていいと思った。

本に限らず、漫画とかでもそうなんだけど、たしかに好きな登場人物の先をもっと読みたいなぁとは思うことはよくある。でも何より、自分が好きになった登場人物の人生の中の大事な瞬間に立ち会わせてもらって、出会わせてもらっただけでありがとう!って感じ。

そういう意味で、その後のあまり多く語らない終わり方は私の中で納得できた。

全体を通して、この本は他の本と比べてより現代的で、伏線とか策略とか全部薙ぎ払って、とにかく読み手にガンガンぶつけてくるものだった。
読み終わった後はどっと疲れが襲ってくるけど、その疲れがとても心地いいものであるので、そのエクスタシーをもっとたくさんの人と共有することができたらなぁと願っている。